恋の予感

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「じぃじ~!」 振り向いたとき、満面の笑顔で走ってくる浩平の姿が見えた。その瞬間、私も笑顔になり抱き着いてくる孫の浩平を愛おしく思う。 「お父さん、元気にしてた?」 浩平の後を追ってきた娘の祥子が息を切らしながら尋ねてくる。 「あぁ、元気にしとったよ。浩平もこんなに大きくなったんだなぁ~」 浩平の頭を撫でながら私は本当に幸せな気持ちで胸がいっぱいだ。 今年4歳になった浩平とは、遠く離れて住んでおり、この日は1年ぶりの再会だった。 私の家は一階建ての木造で、共に歳をとったゴールデンレトリバーのタロウと二人暮らしだ。娘と孫を家の中へ招く。来て早々、浩平が庭でタロウと遊んでいる。ソファーに落ち着いたところで祥子が仏壇に手を合わせている姿が目に入った。 「お母さん、いつもありがとう」 祥子がそう言ってるのが聞こえた。娘が私のところへ歩み寄ってくる。 「お父さん、一人で寂しいんじゃない?うちで、一緒に暮らさない?祐輔も賛成しているの」 前からそういう話は上がっていた。しかし私はいつもこういう。 「わしは行かんよ。ここは、母さんとの想い出の詰まった家だから…」 「お父さんがお母さんを想う気持ちもわかってて言ってるのよ?…そんなに、この家を手放せない…?」 妻は、妻の彰子が亡くなったのは娘が生まれて半年後のことだった。わしは、娘を一人で育てることは、妻が娘を身篭った頃には覚悟していた。 そう、妻は病気だった。 今から57年前、一つの恋の物語が始まった。 「たける、たける、た―け―る―!」バンッ! 「痛ぇ―…」 「痛ぇじゃね―よ!次移動教室だぞ!」 教室の一番後ろの席で、気持ち良く寝てた俺はいきなり教科書で頭を叩かれ不機嫌になる。 「たける、早くしろよ…おいてくぞ」 「ちょ、待って!」 その辺に散らかったプリントを適当にかばんの中に突っ込み博樹の後を追う。 あと3分しかないよ~、間に合わねぇよ… 階段を下りようと角を曲がった時、 ドンッ! 激しく誰かとぶつかった。お互い吹っ飛び廊下に肘をぶつ。 「痛ぇ…」 「あっ、ごめんなさい…」前を見ると茶髪のロングヘアーの女の子が謝っている。 「あっ、こちらこそ…」 女の子は慌てて巻き散らかったプリントを拾う。俺も一緒に拾う。
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