今井彰子

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俺は名簿に名前を書き、1000円置いて 「じゃあ服部さん、予約よろしくね!」 と言って体育館へ行こうとする。横で待たされてる先程の女の子をちらっと見る。…そこに立っていたのは、あの時ぶつかった彼女だった!俺は思わず、あっ!と声を漏らしてしまった。女の子はスローモーションにこちらを向き、小さな声であっと言った。すると女の子の方から、 「あの時ぶつかった…本当にすみませんでした。ケガなかったですか?」 と声をかけてきた。あの時と同じ、キレイで一瞬目が奪われた。 「あっ、大丈夫です。あの、ケガなかったですか?」 すると彼女はクスッと笑って、大丈夫ですと答えた。その笑顔が更にかわいらしく、上品な顔立ちと仕草から、俺は次にとんでもないことを口にしていた。 「あのっ!あのぉ…今度お礼させて下さい!本当に俺、君に申し訳なくて…」 気づいてしまった…彼女の右の肘が赤くなっていることに…。きっとあの時俺とぶつかってできた傷だ…。 「気にしないで下さい!私の方こそ全然前をみていなかったから…」 …だよな、こんな俺が受け入れてもらえる訳ないか…!…と思ったら、 「それじゃあ、代わりに名前、教えて下さい。私は看護科2年の今井彰子といいます。」 と言ってきた。嬉しかった。素直に、嬉しかった。 「俺は医学部5年の斎藤健です。よろしく…」 なんだか、一歩彼女に近付けた気持ちがした。よろしくお願いしますと彼女も言ってくれた。彼女と向き合いながら、少し照れ臭くてハニカミながら、僕の心が温かいものに包まれていく感じがした。 「今井さん、お待たせ―!この書類のこの欄にね、……」 服部さんが彼女に話し出したので、俺は彼女にじゃあまた、と右手を挙げてその場をあとにした。一方の彼女も、それじゃあと笑顔で返してくれた。
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