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保健室にはデスクとベッド、ソファと身長計しかなかった。
「152cmか~…いいなぁ、かわいくて」
女の子3人は身長を測って遊んでる(ちなみに侑菜は3年前から152cmのまま。もう止まってるんじゃなかろうか)。呑気なもんだ。 まぁピリピリしたって疲れるだけだけど。
時刻は22時44分。時間が余っている状態。することもないので、俺と裕二はソファに座っている。
「なぁ、結局オーエンは何者なんだ?」
裕二が俺に問いかけてくる。俺が知りたいくらいだ。
「知るか。化学準備室に集めては音楽室で「熱情」と「月光」を聞かせ、次は保健室?目的が読めん」
「それは同感だ。そもそも大切なものって何なんだ?」
それも俺が知りたい。
不意に、また。
しゃらん、という音を聞いた。
「どうした?」
急に振り返った俺を不思議に思ったのか、裕二が問いかけてくる。
「さっきから何回か、鈴の音を聞いてる」
「鈴?聞いてないぞ?」
化学室で聞こえた声といい、鈴の音といい、この状況のせいで幻聴でも聞こえるようになったか。しっかりしろ、俺。
「…あん?なんだ、あれ」
デスクの上。なにかが――ファイルがあるのに気づく。半透明のファイルが5つ。
俺は立ち上がってそれが何なのか確認しに行く。
「…これ」
「どうしたの?なにかあったの?」
侑菜が歩いて近付いてくる。
俺はファイルの1つを手にとって持ち上げ、ライトで照らして確認する。間違いない。
「カルテだ。俺達全員の、10年前の」
「…なんだって?」
裕二が眉をひそめてカルテを手に取る。それは確かに、俺達のカルテだった。
「なんでこんなもんが…?」
「わからない。でも、これは――」
10年前。俺の記憶が、抜け落ちてる頃。やっぱり、オーエンは知ってやがる。
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