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静まり返った学校の中に、懐中電灯を頼りに行動し始めてから1時間半が経過した。
時刻は23時15分。月明かりは木々や建物に遮られて頼りにならない。
俺は相変わらず両手に花の状態で、裕二は梨香に肩を貸して歩いていた。
「梨香、大丈夫か?」
後ろを振り向いて声をかける。
「大丈夫~」
呑気そうな返事が返ってきたので、逆に気が抜けた。と、そのタイミングで。
「わっ」「きゃぁっ」「ひゃっ」
狙い済ましたかのように、地面が揺れた。地震だ。それも結構な震度の。
「侑菜っ」
侑菜がバランスを崩して倒れる。俺は反射的に左手を離して侑菜を抱きかかえ、庇う。
しゃらん、と、また鈴の音。
まただ。また。また、この感覚。前にも、こんなことが――。
《――げて、――が――に!》
《で――、みん――》
《い――って!はや――》
「いたた…」
揺れが収まった。侑菜を放し、起き上がる。
「大丈夫か?」
「お尻打った…」
俺がとっさに左手を離したせいでナルミが尻餅をついたようだ。
「ごめん、反射的に…」
「大丈夫?」
俺と侑菜がそれぞれ手を差し伸べる。いや、ほんとにごめん。
「いいよ、大丈夫。梨香ちゃん、裕二君、大丈夫?」
「大丈夫だ」
手をとりながらナルミが振り返りながらそう問うた。
裕二が返事をし、全員の無事を確認した。
「地震か…結構揺れ強かったな」
裕二が梨香に肩を貸しつつ歩いて近付いてくる。
「家の食器大丈夫かなぁ」
「あー…割れてそう」
ナルミと梨香がそんな心配をしているが、今はそんな場合じゃないような気がする。それに、さっきの既視感。
あれは、なんだったんだろう。あれも、10年前の時のなんだろうか。あの時も、誰かを庇って――。
「りょーくん?」
考え込んでいた俺に気づいて、侑菜が心配そうにこっちを見ていた。
「どうしたの?大丈夫?」
「…ああ、ごめん、なんでも――」
答えかけて、ふと思う。
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