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なんでオーエンは俺達を集めたんだろう。それに、この既視感。偶然なのか?そんな偶然があるのか?
「…なぁ、みんな。1つ聞いていいか?」
「何よ、改まって」
もし俺の考えが当たっていたら、オーエンの目的がわかる。謎を解く糸口が見つけられる。だから、聞いてみる。
「10年前の記憶、あるか?」
俺の言葉に、全員が固まった。
「…どういう意味だ?」
「そのまんま。10年前の記憶が抜け落ちたりしてないか、って意味だ」
だれも言葉を発さない。
「…私の記憶、一部だけ抜け落ちてる」
しばらくの沈黙を破り、ナルミがそう答える。
「私も、一緒。いつごろか覚えてないけど、10年前の記憶がない」
梨香も肯定した。じゃぁ、やっぱり――。
「俺にもない。けど、忘れてるとかじゃないのか」
裕二が1つの可能性を示す。
「かもしれない。でも、記憶が無くなってからの自分は覚えてる。あのときは、何日か前のことだったのに覚えてなかったのを覚えて る」
「…はぁ」
裕二は頭を掻き、ため息をつく。
「…それが何を意味するか、解るな?」
俺が問うと、裕二は頷いた。恐らく、全員がわかっているだろう。
「その抜け落ちた記憶の時間、俺達は一緒にいて、何かあったんだろうな」
俺は頷いて付け加える。
「オーエンが俺達を集めたのは、大切なもの――記憶を戻すためだろう」
そう考えると合点が行く。音楽室で流れた音楽に聞き覚えがあったのも、そのためだ。
「でもなんでそんなこと」
ナルミがそう呟く。
「目的までは解らない。けど、さっきの梨香を見る限り、その記憶はいいもんじゃないと思うぞ」
あの怯え方は普通じゃない。よほどのことが、俺達の身にあったんだろう。
「でも、思い出せるかもしてないのにそのチャンスを逃すのなんて」
「このチャンスを逃さなかったら別のチャンスを逃しかねないぞ?」
知らないことは罪だという思想もあるが、知るからこそ動けない人間もいる。どちらが幸せかは解らないけど。
「…それでも私は、逃げたくない。自分のことだから、向き合わなきゃ」
ナルミの言葉に、梨香が頷いた。
「…オーケー、とりあえずここで立ち止まっても仕方ない。判断はギリギリでやれるだろう。急ごうぜ」
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