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 化学室の扉は閉まっていた。鍵は開いているが、オーエンの言葉が本当なら、何者かが俺達を待っている。  全ての答えも、そこにあるかもしれない。 「…準備はいいか?」  時刻は23時25分。リミットには間に合っている。  裕二が全員に問い、確認する。全員が頷いた。裕二も頷き、扉に手を掛ける。 「…行くぞ」  勢いよく扉を開く。そして聞こえる――今までよりはっきりと聞こえる――、あの音。  しゃらん――。  化学室の机の上には、大量の、様々な薬が並べられていた。 「なんだ、これ――」  裕二が化学室に踏み入る。侑菜、ナルミもそれに続く。同時に。 「ぃゃ…っ」  小さい声が。 「…ぃゃっ…」  梨香の口から漏れた。 「いやああああぁぁぁぁっ!!」  耳をつんざく悲鳴。梨香の目からは大粒の涙が溢れ出し、生気が失われている。さっきより、ずっとなにかを恐れてるような――。 「梨香ッ!」  裕二の叫びでハッとする。梨香の姿は遠くに見えた。無我夢中で走ってる。 「裕二ッ!」  裕二は猛スピードで梨香を追いかけて走っていった。 「梨香ちゃん、裕二くんっ!」 「ダメだッ」  追いかけようとしたナルミと侑菜を手で制す。 「椋くん、追いかけないと!」 「ダメだ、ここで追いかけてバラバラになったら――」  ――しゃらん。  俺の言葉など必要ない。そう言いたげな鈴の――あの、鈴の音が。  はっきりと、聞こえた。俺だけじゃなく、ここにいる2人にも。  しゃらん。  また。また、聞こえた。化学室の、中から。  3人が、同時にその方向に振り向いた。そこには、いつのまにか居た。  俺達を、待っているモノが。
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