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昨日カプセルから漏れ流れ出ていた液体は、床に吸収されたのか、それとも蒸発したのか、半分程は消えていた。周りの機械は静寂してはいたものの、僅かに聞こえる冷却器の音から察するに、電源が切れているわけではなさそうだ。
2、30分機械を調べ上げ、好美はこの機械の構造を大方理解した。やはり、この機械はこのカプセルのロック解除、防護装置であることが分かった。これが一体一体何のために作られ、何の目的で作られていたのかは、コンクリートの壁に貼られたメモが教えてくれた。
「やっぱり、父さんか…」
好美は見覚えのある字を見て呟いた。便箋くらいの大きさのメモ書きを、好美はゆっくりと読み始めた。
「好美へ。今、お前はこの装置の起動方法がわからず、恐らく頭を悩ませているころだと思う……」
「父さん、もう起動させちゃったよ」
好美は呟いて苦笑した。
「とはいえ、お前は昔からハッキングや情報技術の才能はあったからな。お前が大きくなる頃には、きっとこのシステムを解除することも可能だろう。好美、これは、父さんの最高傑作であり、最大の問題児だ。そして、この機械を悪用されてしまえば、恐らく兵器利用されかねないであろう。だから、出来ればこれは、誰の目にもさらされず、完全にこの世から消却させておくべきものだったのかもしれない。だが、これは私の「子供」だ。だから、私はこの機械をお前に託してみようと思う。最初のうちはどう接すればいいか困るかもしれないが、色々教えてやってくれ。何しろ、まだ何も知らない子供だからな。最後に、スペリオルに注意しろ」
「スペリオル…?」
ここで、メモ書きは途切れてしまっていた。途中で書くのを止めたのか、何か書くのを中断された読み取れない文字が、一文字だけ残っていた。
メモの裏側に電気の光で透けて、何か文字が書いてあった。好美はメモのウラを覗いた。
「P・M28型D-typeを頼むぞ」
「P・M28型D-type……?」
「ここにいたんだ」
背後からの声に驚き、好美は振り向いた。天上に空いた穴(もとい、好美の書斎の床に空いた穴)から、あの少年が顔を覗かせていた。
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