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好美の家から数キロ離れた場所。今では廃物となった鉄橋の上に、好美は座って、溜息を吐いた。調子の悪い時、気分の悪い時、悩み事があった時、好美はよくここに来る。街の高台に位置するこの鉄橋。夕日を見るには絶好の、好美と相子のみが知る好スポットである。
「何か、とんでもないことになっちゃったわね」
好美が振り返ると、そこには苦笑した様子の相子がいた。
「……やっぱり盗み聞きしてたんだ」
「あ、ばれてた?」
苦笑しながらも、相子に反省の色は見られない。二人の間柄だ、これくらいのことはご愛嬌だし、何より好美自身、心を許して話し合える相手が欲しかったのだ。
「まさか、母親だなんて思われちゃうだなんてね」
ぼんやりと街の景色を眺めながら、好美は呟く。
「でも、機械に心があるだなんて、あんた本気で考えてるわけ?」
「恐らく…だけどね」
好美は額を軽く指でなぞって、苦い顔をしながら答えた。
「父さん、何であんなの作っちゃったんだろ」
好美はボソッと呟きながら、再び息を吐く。
「じゃあ、好美は何でいっつも機械ばっか作ってるのさ」
「え…?」
相子に問われて、好美は言葉を詰まらせた。
「ま、そんなこと私の知ったこっちゃないけどねえ」
少し意地悪そうに、相子は鉄橋に座り、足をぶらぶらと動かした。
「私、さ」
「うん?」
ふと、好美が立ち上がって、好美が喋りだしたので、相子は少し声を高くして受け答えた。
「作るの、好きなんだ」
「ふむ、それで?」
「自分で作ってさ、それが動くとね、なんか、それが自分の子供みたいな感じがし
ちゃって」
「子供、ねぇ……」
「……あいつも、子供なんだよね」
「設定では、ね」
「……言っちゃった」
「んぁ?」
「私はお母さんじゃないんだって…。多分、傷ついたよね」
「心があれば、ね」
今更かもしれない。しかし、好美は悔いていた。他にもっと、言い方があったのではないか?
生まれたばかりの子供に、私は親じゃないと言うような親が、果たしてどこにいるのだろうか。
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