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「あっぶな~……」
「こっちが言いたいわっ!」
相子は真顔で好美に突っ込んだ。好美はマイペースで懐からリモコンのようなものを取り出し、スイッチを押した。ライトから赤い光を出していたガンカメラの光が緑に変わった。
「じゃ、行こっか」
軽い足取りで、好美は廊下を進んでいった。
「……」
複雑な表情で、相子もついて行った。
報告書の計算が全部終るころには、すっかり夜になっていた。太陽光をしっかり充電した電灯が街の道路を照らしていた。
「しっかし、相変わらずバカ広いわね」
報告書の最後の一枚を仕上げて、相子は軽く伸びをしながら言った。好美の書斎は驚くほど広いものであった。地下に作られた学校の図書館ほどの大きな部屋には、あちらこちらの本棚に大量の本が敷き詰められていた。もちろん、全て機械工学関係の書物である。
「全部父さんの本なんだよね。一体どうやって買い集めたんだろ?」
寝ぼけまなこな目をこすりながら、好美は壁にある赤いスイッチを押した。五秒と経たずに、スイッチの横の四方30センチくらいの穴からホットコーヒーが二杯出てきた。
「まったく、ほんとにこれ全部読んだのかしら」
コーヒーカップ受け取って、相子は本棚から本を適当に一冊抜き出してパラパラとページをめくった。
ガコッ
「がこっ?」
明らかに、本棚から変な音がした。と、いきなり相子の足元の地面がパカッと開いた。
「ヒャッハー!?」
叫び声をあげて、相子は穴の中に落ちていった。
「相子!?」
コーヒーカップを投げ捨て、好美は穴を覗き込んだ。幸い高さはあまりなかったようで、相子は目を白黒させて尻餅をついていた。
「う、ぐぐぐ…」
頭を軽く振り、相子は天井を睨み付けた。ちょうど、好美が穴から下に飛び降りていた。
「好美! 防犯装置かなんかならちゃんと説明明してっていつも言ってるでしょ!」
相子はさすがに怒って好美の首をぎゅうと絞めた。
「あぐぐ、私もこんなの知らないよぉ!」
白目を向く好美もまた、この状況に混乱していた。
「父さんの隠し部屋かなんかかな…」
軽く咳き込んで、好美はあたりを見回した。
「っきゃあぁー!!」
突然に、相子が叫び声をあげたので、好美は一瞬飛び上がった。
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