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「こ、こここれって人体標本……!?」
相子はただ恐れおののくしかない。
(違う。眠ってる……?)
それは、好美の勘だった。ただの標本にこんな大掛かりなシステムは必要ない。間違いなく、これは生きている。好美はそれを直感し、カプセルに近付いていった。
「ちょ、ちょっと好美、近付かないほうがいいって!」
「相子、手伝って」
「うぇ!?」
「そこのレバー引いて!」
突然好美が叫んだので、相子は驚き、好美の言う通りに、機械の左端に付いている金属バットくらいの長さのレバーを思い切り引いてしまった。
好美はカプセルの横に設置されてあるパソコンのキーボードを叩いていた。
「やっぱり何らかの方法で眠らされてる……パスワードロックされてる? 間違ったパスワードを押すとプログラムが強制消去される仕組みになってるのね」
好美がキーボードの手を休めた。
(でも、何なのこれは……ただの生命維持装置じゃない。いや、こんな装置で人間が延命できるわけがない!)
パソコンの制御権をどんどんと奪っていく。
かなり年数が経っているのだろう。この機械のバージョンはかなり古い。おかげで、好美は難なく制御システムのハッキングに成功した。
(あら、可愛らしい解除パスだこと)
「MOTHER」
好美は静かにその六文字を打ち込み、『Enter』を叩いた。
キーを押した瞬間、好美は不自然な空気に襲われた。
「パスワード認証、ロックを解除シマス」
カプセルから、大量の蒸気が漏れだし、動かなかった機械が一斉に眠りから目覚め出した。
「うわ、わわわ……!」
相子はひたすらおろおろするばかりである。周囲の機械がフル回転し、激しい爆音とともに、カプセル内に電流がが走り、中の少年は激しく痙攣した。
「最終兵器、PEACE・MAKER、起動準備完了シマシタ」
「兵器ィ!?」
スピーカー音声を聞いて、相子はさらに混乱の色を強める。
「ロックヲ解除シマス」
途端に、機械が静寂した。カプセル内の液体が抜け出て、床に広まっていった。
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