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夜が明けた。好美が目を開けたときには、時計の針は既に八時を越えていた。
軽くまぶたをこすり、寝癖がかかった頭を軽く掻く。
目の前に、「あれ」がいた。栗色の髪の毛の少年が、好美が寝るはずのベッドで吐息を立てて眠っていた。
(この人は、いったい誰なんだろう……)
ぼんやりと、好美はベッドですやすや眠っている少年を眺めていた。
(何はともあれ、父さんの服残しておいたのは正解だったな)
とりあえず、この男の子が着ているずぶ濡れの服を、父親のパジャマに(自家製早着替えマシーンで)着替えさせ、大方の看護は済ませたのだった。相子は疲れたのか、ただ単に家に帰るのが面倒臭かったのか、ソファーで眠っていた。
「ネ…ギ、94…セント……消シ…ツ…」
ふと、少年が最後に言った台詞が気にかかった。
(なんて言ったんだろ? ネギがどうたらこうたら……?)
昨日の夜、長い間封印されていた男の子、周りに置かれた機器、無数に交わる電気コード。
「エネル…ギ、94パ……セント……消シ…ツ…」
バラバラなコトバのパズルが、一箇所に集中しつつあった。
「エネルギー96%消失」
「!」
この男の子は本当に、ただのカプセルの中に閉じ込められた「人間」なのか? 一体何の根拠があって? 彼はなぜ封印されたのか?
「最終兵器、PEACE・MAKER、起動準備完了シマシタ」
体中に電流が走った。好美は混乱していた。機械工学が好きな自分。私は恐らく、とんでもないものを「起動」させてしまったのだ。しかしその迷いとは裏腹に、もしかしたら、自分はパンドラの箱を開けてしまったのではないかという、興味、興奮、研究欲、あらゆる気持ちで、今の好美は満たされていた。いてもたっても入られず、好美はあの隠し部屋へと走っていった。
一瞬だが、ベッドからはみ出た手がぴくりと動いた。
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