1章

2/47
794人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
コンコン 扉を叩く音に、僕は意識をそちらに向けた。 「坊ちゃま。起きてください。朝でございますよ」 ……朝? 扉の外から掛けられた声に、僕は窓の外を見る。 そこには、既に太陽が顔を覗かせていた。 …………!!? しまった!! 緊張のあまり、一睡も出来なかった!! 「坊ちゃま? ……ロット様?」 「あ、ああ! 大丈夫。もう起きたから」 「左様でございましたか。では、朝食の準備も整っておりますので、お待ちしております」 「分かった。ありがとう」 いつの間に、こんな時間に……。 不安で何度も確認している内に夜が明けてしまった。 とにかく、後悔してても仕方ない。 僕は着替えを済ませて朝食を食べに向かった。 僕が食堂に行くと、そこには珍しく他の兄弟達が揃っていた。 「ロット! いよいよ初任務だな!」 「お前、どんくさいから心配だなぁ……」 「いやいや、ロットなら大丈夫だって、俺の弟なんだから!」 僕の姿を見て、兄貴達が口々に言う。 さらに、姉貴が近付いて来て、僕の顔を覗き込む。 「あら、ロット。その目の下……。クマ?」 「まさか、緊張で寝れなかったなんて言わないでしょうね!?」 「ち、違うよ!」 事実、その通りだったが、気恥ずかしさから、僕は顔を真っ赤にして否定した。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!