―第一章―

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「くくく…さすがに二撃は 防ぎきれなかったか」 宙を浮揚する男は不気味な笑みを 浮かべてこちらを見下ろす。 その身に纏う得体の知れない力に 自然と体が震えるのを感じた。 「お前、は 一体……」 「サタン様、人民の捕縛 完了しました」 ようやく絞り出した言葉と同時に 感情の無い事務的な声が 目の前の男に報告をする。 その言葉に機能が停滞しかけてた 脳が正気を取り戻す。 「そうだ、村のみんな…! お前、みんなをどこに!?」 「くく…そうだな、私の攻撃を 偶然とはいえ二度も逃れた 貴様には特別に見せてやろう。 イヴ、封印具をここへ」 男に指示され、先程の感情に 乏しい少女が無の空間から 大きな鏡のような物を出した。 鏡面を見るとそこに映っていた のは― 「みんな…!?」 鏡の中にはさっきまで笑っていた 村の人々が閉じ込められていた。 皆、必死に助けを求めているよう だがその声はこちらに届かない。 「くそ…っ!」 「自分の無力さを嘆じているのか …くく、憐れなことだ。 貴様の目の前でこれを粉砕したら その心も打ち砕かれるのだろうか 」 そう言って不快な笑みを こちらに向けると、男は己の 手元へ鏡を引き寄せ、 その中心に指を当てた。 その行為が何を意味しているか 直感したライトは声を上げ 必死にそれを制止した。 「やめろ!!そんなことをしたら みんなが…!」 「あぁ、鏡諸共砕け散るだろう。 その時の貴様の顔が見物だな」 「やめろ!その手をどけろ!!」 「せいぜい己の無力さを 恨むんだな…!」 男の指に力がこもる。 その周りを取り巻く黒い力が 鏡の中心に集結し、中にいる 人々の顔が絶望に歪んだ。 「……ッ!!」 その瞬間、ライトは 無意識に杖を構えていた。
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