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「いらっしゃいませ」
「一人だが、よろしいかね」
「ええ、どうぞ」
銀髪の老紳士は断りを一つ入れ、ハイカウンターの一番奥の席に腰を下ろした。
バーテンダーは少し気遣いながら三角折にしたお絞りを老紳士の手元に置き、メニューを取り出そうとすると、
「ああ、構わんでくれ、マティーニを頂こう」
銀髪の老紳士はそう言ってバーテンダーを遮る様にして注文をした。
「はい、マティーニですね、承知しました」
バーテンダーは快く注文を受け取るとすぐにミキシンググラスを取り出し、キンキンに冷えたドライジンを注ぎ、ドライベルモットを少量加え、オレンジビターを 1Dash すると、大きめのカチ割り氷を一つ詰め、ステアを始めた。
銀髪の老紳士は少し考えた様子でバーテンダーを見守っている。
バーテンダーは気付く様子もなくステアを終え、クリスタル製のカクテルグラスへマティーニを注ぎ、カクテルピンに刺した種付きオリーブを落とした。
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