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「すまんが君、聞きたい事があるのだが」
銀髪の老紳士はカクテルグラスをカウンターへ置くと、少し間を置き、バーテンダーに話し掛けた。
「え、ええ、どうぞ」
不意な問い掛けにバーテンダーは少し気後れしている様子だ。
「このBARの店主はどうされたかね?」
銀髪の老紳士は緊張の面持ちとも取れる表情でバーテンダーに尋ねた。
「父・・・の事でございましょうか?」
「・・・君は息子さんなのかね!?」
銀髪の老紳士はとにかく驚いた様子でバーテンダーに見入っている。
「ええ、そうです・・・あの、以前父がお世話になった方でしょうか?」
「ああ、君の父親とは昔からの付き合いでね、実は君にもお会いした事があるんだよ、わたしは」
「そうでしたか、ちっとも気付きませんで・・」
バーテンダーははにかみながら笑顔を見せた。
「はは、無理もないさ、30年も昔の話だからね」
銀髪の老紳士はカクテルグラスを傾けながら微笑んだ。
「それで君の父親は元気にしているかね?」
「・・・父は2年前に他界しまして・・」
「・・・・・・・・・ああ、そうかね・・・」
銀髪の老紳士は多少驚きはしたものの、すぐに諦めた様子でカウンターに両手を乗せ、表情を曇らせた。
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