Prologue

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夏、毎日気温が高いせいで暑いのが当たり前になってきた。 蝉がこれでもかと鳴いているおかげで夏だという印象をよりいっそう強くしている。 暑さが欝陶しくてしょうがないもののここまで蝉が鳴いてくれると、まぁ夏だから仕方ないかという気持ちになって開き直れるものだ。 「高屋せんせー!おはようございます!」 現在私は49歳。 とある高校で世界史の教員をやっている。 「おはよう!」 最近の女子高生は皆でかいな、生意気だ。 私より大きい子は何人もいる。 まぁさすがに49年も生きてこればそんなことにも諦めがつくもので、今となってはどっちでも良いが、やっぱり昔は悔しかったものだ。 こんな暑い日には私は高校生だった時を思い出す。 部活が楽しかったことや、勉強が辛かったこと、友達にからかわれたことも、今から思えばものすごい恥ずかしい発言をしてしまったこともいい思い出だ。 でもやはり1番の思い出は高校三年生の夏、恋愛だ。 今でも昨日のことのように覚えている。 あの時の君の楽しそうな笑顔も怒った顔も戸惑った顔も全て鮮明に思い出すことができる。 それと同時に、ああ、私は本当に好きだったんだと思う。 ただあの時の私はまだ若くて、人の気持ちを上手く読み取ることができなかったのかもしれない。 さて、余計なことを考えていると、また噛んでしまう。 なんて思いながら私は今日も教壇に立った。
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