第2章

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「高屋くんは何か憧れとるものとかある?」 憧れているもの? そりゃ誰でもあるもんだ。 俺も小学校の時はポケモンマスターになりたかったし、身長が180センチもあるバスケットの選手になりたいと思ったこともある。 ただ、隣の芝は青く見えるもので、実際は実現不可能なことが多い。 「私の場合はね、1年生の時に応援団を見てかっこいいと思った。やから、応援団になりたかった。2年生の時は立候補する勇気が出んかったから、今年は有紀ちゃんに相談したらやることになった、って感じかな?」 へー、なんか桜井さんって静かに生きたい人やと思っとったわ。 「そんなことないよ。地味な自分はあまり好きやないし、もっと明るくて活発になりたかったかなー。でも1日目からいきなり熱中症になるし、…やっぱり向いてないかもね」 さて、空気がまずかったのが、どんどん重くなってきたぞ。 やべー、これやっぱ励ますパターンかな? 何言えば良いか分かんねー。 とりあえず明るめに言えばなんとかなるやろ! 「け、けど、俺桜井さんのこと結構好きやけどなー!」 「え?」 …ちょ、意味分からんこと言っちゃったよ! 話の流れ的にもどう考えてもおかしいし、好きってのも……いや、嘘ではないんやけど…あーもうわけ分からん! 桜井さんめっちゃキョトンとしとるやん! 「いや、今のはその…好きってのはそういう意味やなくて…」 すると、目が点だった桜井さんは、ふふふ、と優しく微笑み、 「ちゃんと分かっとるよ」 と言った。
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