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どうやら羽根ペンの調子だけは良いみたいだ。わたしの今の状況のように悪くはない。これまで調べてきたものをこの手帳に記そうと思う。記入者はわたし、セド・フォークス、一人の魔術信仰者であり、教会の創立者だ。
シュピーア地区から北。膜のように広がる闇の中で赤黒い建造物が聳えている。まるで魔物の心臓、管が不気味に脈打ち、穴から穴へと吹き抜ける風は呼吸しているようだった。生命体か、定かではない。赤い光の矢が辺りを突き刺すように降り注がれている。疫病の猛威をふるいただしたかのように──まさしく、それは疫病であった。〈銀灰病〉にも似た症状を確認した。仲間の一人が瞬く間に白い光沢を帯びて灰となり死んだ。なぜかわたしにはその症状は見られない──原因は赤い光なのだろうか。解明できぬまま数日で残り三人となる。わたしは尋常ならざる建造物を〈悪魔の心臓〉と名付けた。謎を解けないわたしたちを嘲笑うかのように風が通り抜ける。後日、潜入を試みた。この判断は悪くないだろう、少なくともその日のわたしはそう判断したのだ。
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