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そこで髑髏を象った銀の仮面をつけた人間を目にした。人間に近い者といったほうが良いかもしれない。この闇に近しい者たちは〈悪魔の眷族〉と呼ばれていた。恐るべき魔術をもって、わたしの仲間の命を奪っていった。彼らは無敵ではなく、剣で突き刺したり魔術で焼いたりすれば死ぬ、だが、しぶとく抵抗されたため始末できたのは一人だけだった。死ぬことがわかっただけでも成果としよう。それから、わたしは姿隠しの術を施し、奥へ、奥へ、奥へと進んだ。術の効力も切れる頃、辿り着いた先の空間には、腐った果実が踏み潰されるような不快な音を出しながら変態していく生物が捕らえられていた。これは造りだされたのだろうか? わたしの理解を越えている。
異形の四肢、砂と血が肉と肉の間に挟まっている大きく膨らんだ腹、あまりにも巨大な翅、針のように細いが鉤爪よりも鋭い口、死体のように不気味な目。体のいたる所に蛆が集まっている。わたしは直視できない。しばらく襲いかかる嗚咽と恐怖との闘いを繰り広げた後、観察をはじめた。おそらく様々な生物の集合体だ。(グロテスクにつぎはぎされている)これを〈合成虫〉とする。奴はこの大陸を滅ぼすほどの危険を孕んでいる。しかし、わたしではどうすることもできない。幸いなことは未完成であることくらいだろうか。形を成しては崩れる、を繰り返している。
姿隠しの術が切れた。
(後の文字が消えている)
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