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「で、親父の名前を使って俺を呼び出した訳は何」
隆吾は黙ったままだ。
「さっき言った、事情が変わったっていうのと関係あるの?」
「あぁ」
一呼吸おいてから、そう頷いた。
車中、半年ぶりに再会した兄弟二人の他愛もない話しが続いた。互いの近況報告などがもっぱらである。
この二人、決して仲の悪い兄弟ではない。むしろ良いと言って良い。三つ年上の兄を幼少時の三伍はいつも追い掛け回していた。兄の姿が見えなくなると泣き喚いた程である。隆吾はそんな弟に嫌気が差す事もあったが、結局最後には弟の思いに応えた。弟の兄に対する懐きぶりは周囲の誰もが目を細めて羨んでいた。
しかし、やがて二人の関係は転ずる事になる。
今度は隆吾が弟を追うようになったのだ。始めのうちこそ抵抗を見せていた三伍であったが、兄の思いに応えるようになる迄にそう時間はかからなかった。
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