幼蝶の章 前

2/9
前へ
/53ページ
次へ
春爛漫だ。 春爛漫過ぎる。 そう思いながら僕、上之宮蓮斗(うえのみやれんと)は、草木が生い茂る畦道を歩く。 (どうしてこうも春うららなんだ……) 僕は軽く肩を下げながら溜め息をつく。 春は嫌いだ。 直接春が嫌いという訳では無い。 春に湧く『あいつら』が嫌いだから、自動的に春が嫌いになった。 そう、虫だ。 僕は虫が大嫌いだ。 特にこれといった理由は無い。強いて言えば形や動きだろうか、とにかく嫌いなのだ。 「はぁ………」 改めて溜め息をつく。 (どうして毎年入学式は春なんだ?嫌になる……) 今日は高校の入学式だった。特に何も変わった事もなく僕は今日、高校生になった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加