二章 新たな勢力

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私はゆっくりとその日記を裏表紙で閉じた。   師は戦争を予期して、あんな計画を立てていたのか。   日記に書いてあったように、森国は数年前から頻繁に使者を送ってきているのは事実だ。   私は単に親交を深めようとしているんだとばかり思っていた。過去の事もあり、羅国はあまり森国を好んでいない。その、ある種の亀裂を埋めるためにだと勘違いしていた。   隠力を狙う相手……今度は特殊部隊のような小さな規模ではない。国という大きな組織と立ち向かわなければならない。   森国とは勿論戦争なんて望んでいない。そもそも昔に一度羅国側は負けているのだ。それ以来は平和条約も締結している。   しかし現在だとどうだろうか。二十一年前に発見された『隠力』という力は羅国にしか存在していない。つまり、悪く言えば隠力を独占している。   隠力者を武力として使えば、間違いなく一騎当千となる。帝国と隠力連合との戦いがその証拠だろう。   森国は恐れているのかもしれない。隠力という新たな武力を自分達に向けるのではないかと。   学園は来年の春に初めての卒業者を出す。その中には帝国兵へと推薦される者が多数いるはずだ。   森国の立場で考えてみるならば、動くのなら今。大量の隠力者を殺すのも手に入れるのも。   ……なんだか溜め息が出てくる。   一年前の私の願いは叶わなかった。
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