二章 新たな勢力

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‡   どの本も羅国の史実に関する物ばかり。隠力の資料はほぼ零に等しい。   やはり二十一年という若い歳月が尾を引いているのか。   半分諦めかけていたその時、面白い題名の本を偶然にも俺は見つけた。   「魔生物に纏わる伝説……なんだこれは?」   『魔』という語は確か『人の心を迷わし、悪に引き入れる神の呼称』だった気がする。数千年前から伝われている神という存在の中の一種だ。   神やら仏やら抽象的な存在は俺は好きじゃないんだが、仮にもここに保管されているからには、全くの作り話ではない……と信じたい。   直ぐさま中身を流し読みしてみるにも、どれもやっぱり胡散臭い。まぁ、伝説なんだから胡散臭くてもおかしくはないか。   「お?」   適当に読んでいた所で、妙にひっかかる文章を目で拾った。   『……魔生物は己の意思一つであらゆる事象を起こし、その力は魔力と呼ばれ、彼らはそれを自らの生命力と還元していた』   「隠力に似ている……」   多少の違いはあるが、共通点はかなりある。それに次の文章にも、   『……この魔生物の遺伝子が数千、数万年と時を経て我々人間の中に潜み、隠力として目覚めたのではないかとされる』   と記述されている。成る程。隠力の謎に迫っている書物……これは中々に面白い発想だ。   「まぁでも所詮伝説か」   読むのもそこそこに、元にあった場所に戻し、俺は別の本棚へと移動することにした。  
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