三章 夏の終わり

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目と身体が世話しなく動く。泪の攻撃はそのどれもが速く、私は避けるだけで精一杯……   「あなたも応戦しないと負ける」   「わかってる……よ!!」   泪の横合いからの振り抜きを槍で受け止め、そのまま手首を回し、踏み込んで突きを放つ。   だがそれは後ろに跳ばれて間合いの外へと逃された。   これで終わるわけにはいかない。私は下半身に電気的な負荷をかけ、走る速度を高めた。   見事に距離を一瞬で詰め、その勢いで反撃を仕掛ける。   「このっ……」   刺突の連打は間違いなくどれも泪に狙いをつけている。しかしそのどれもが最小限の動きだけで避けられ、全く当たらない。   「単調」   「がふっ!!」   しまった。自分の攻撃だけに意識し過ぎてしまっていた。   泪の木刀は私の鳩尾を捉え、防御に気をまわしていなかった私はあっさりと膝を地につけてしまった。   「十五分」   「ゲホッ、ゲホッ……あ~勝てない。最大生理限界がないだけで、こんなにも力の差があるなんてね……」   この訓練は『先に一撃を与えた方が勝者』という規則でやっていた。よって私の負けである。   「確かに動くのは速い。けど慣れてしまえば十分対応できる。もっと変化をつければいいと思う。あと、攻め方の種類が少ない。だから予測されてしまう」   「痛いとこつかれた……」   何もかも泪の言った通りである。まぁ、泪が異常に強いというのもあるにはあるけど。
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