三章 夏の終わり

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これはやばい。というかまずい。いや、やばい。   思考が撹乱し、自分でも意味がわからなくなってきた。   「その顔、やっぱりやってないわね」   「どど、どうしよう!?丸二日で終わるかな?」   恒例の折檻がすぐそこまで迫ってきている。去年は闘刃君のおかげで何とかなったけど、またお願いするか?   「頼みの闘刃さんはどうやら帝国にお出かけよ」   「うっ……読まれてる」   こうなれば手段は一つしかない。   「あの、お姉様……」   「駄目よ。それにあんたのような妹をもった覚えもないわ」   内容を言う前にきっぱりと断わられてしまうとは。   だがここで引き下がるにはまだ早い。   あの呆れた様子の理絵ちゃんなら、ごり押しすれば『やれやれ、しょうがないわね』ってなってくれる。   「言っておくけど、今回の私は優しくないわよ。いくらお願いされても自分の力でやることね」   ……鬼だ。ここに現代を生きる鬼がいる。うっすらと目を凝らせば頭に二本の角……はないけど、そう感じるくらい何か厳しい。   「それに、若菜が折檻されるという状況も悪くはないわ」   背筋におぞましい寒気が走った。理絵ちゃんの悪鬼の類の笑みが恐ろし過ぎる。彼女はサド側の人間だったのか。   「もう十六なんだから自分で努力することもしないとね。勉強も」   それだけを最後に残し、理絵ちゃんは体育館から出ていってしまった。   そうか。勉強にも努力……
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