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途中で若菜とは別れ、安息の地はもうすぐという所で嫌なモノを発見してしまった。
俺は見なかったことにし、さっさと図書館の中へと歩を進める。
だがそいつはでかい図体を利用し、回り込むようにして目の前に現れてきた。
「どちらさまでしょうか?」
「あの、わたくし宗吉という者でありまして……ってんなわけないわ!!ほら、この顔!!きみの親友じゃないの!?」
「人違いです」
それだけを言い放ち、先を急ごうとはしたものの、結局は肩をつかまれて止められた。力任せの男め……
「なんだ?夏休みの宿題ならもう見せんぞ」
「なん…だと…じゃなくて、別件だって」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないよ!?」
「俺の読書の邪魔はさせん」
「フッフ~ン」
すると吉宗は非常に気持ち悪い奇声を出し、これまた気持ち悪い得意顔をつくった。気持ち悪い。
「なら、その読書の依頼ならどうする?」
「……どういうことだ?」
面倒な事を押し付けられると思っていたので、つい拍子抜けしてしまう。しかし既視感のあるやり取りだな。
「これ、帝国図書館から闘刃宛て。昨日、用事で帝国に行った時にもらったよ」
「俺に?」
そう言って渡されたのは何の変哲もない普通の茶封筒。この薄さから見ても、中に入っているのは紙切れ一枚だろう。
早速中身を出し、内容に目を通してみる。
「…………」
「闘刃?」
「……吉宗、俺を今から帝国図書館まで送ってくれないか?」
今日は忙しくなりそうだ。
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