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帝国図書館は、帝国城下町の中でも寂れた地域に存在している。
理由はよくわからないが、騒がしい町の中心部よりはよっぽど静かで好都合な場所とも言える。
「すまんな。送ってもらって」
「全然おけ。そんじゃあ、帰りは通信機にでも知らせといて」
「あぁ、わかった」
漆黒の空間に溶け込み、吉宗は姿を消して行ってしまった。さて……
「それにしてもでかいな……」
帝国城程ではないにしろ、うちの学園といい勝負をしている大きさだ。
学園と違うのは、城と同時期に造られただけあって、外観がかなり古くなっている所だろう。伝統性を全面的に押し出しているのがよくわかる。
「ん?闘刃じゃないか」
その帝国図書館の入口に何故か蓮がいた。……偶然にしては出来過ぎている。蓮も呼ばれたんだろうか。
「蓮はどうしてここに?」
「ここの司書から連絡があったんだ。なんでも、師の遺品が埋もれていたらしい」
源蔵の?帝国図書館になんで?
思案を同時進行に、俺達はとりあえずその司書とやらに会いに行くことにした。
「どこにいるんだか……」
この図書館は本当やたらに広い。一階から五階まで全て本棚で敷き詰められており、こうして案内図を見なければ下手すると道に迷ってしまいそうだ。
「あの……蓮花様と闘刃様でしょうか?」
それをしばらく眺めていると、後ろから声をかけられた。
振り向いてみると、そこには二十代くらいの女の人が姿勢正しく直立している。
「はぁ、そうですけど……」
「お待ちしておりました。私は帝国図書館の司書、梓と申します。ご案内致しますので、私について来て下さい」
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