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彼女は俺達を待たずにさっさと行ってしまう。
見失うのもいけないので、早歩きですぐ後ろまで追い付き、俺達は言われるまま彼女の向かう場所へとついていった。
「地下へ参りますので」
関係者以外立入禁止と貼られた扉を鍵で開け、さらに下へと階段を下っていく。
地下には俺も初めて入る。噂では帝国の重要な書類や本が詰まっているとは聞くが……。
うす明るい階段も終わり、再び司書は鍵を使って眼前の扉を開口する。
天井の電灯が光り、その空間があらわになった瞬間、思わず声を漏らした。
「これは……凄いな」
「……うん。私も驚いた」
見上げるくらいの高さまで膨大な量の本が本棚に並んでいる。それは視線を前に向ければ、ざらに百メートル以上は余裕である長さだ。
「捜すのも一苦労でしょうから予め私が見つけておきました。あちらに置いておりますので」
手の平で示された先には小さめの本棚があり、そこには数冊の本が既に用意されていた。
準備のいいことで。
「鍵は渡しておくので、出る時は一階の司書室に返却して下さい。それでは」
「あ、待ってくれ」
「なんでしょう?」
蓮に呼び止められ、司書は無表情にこちらを覗く。抑揚のない声色にしろ、どうも機械的な印象を与える女性だな。
「どうして今更になってこんな物を?」
「……私は言われた通りにしただけなので何も存じません。それはご自分で確かめて下さい」
それを最後に彼女はこの部屋から出ていってしまった。
言われた通り……?
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