二章 新たな勢力

3/9
前へ
/280ページ
次へ
彼女は俺達を待たずにさっさと行ってしまう。   見失うのもいけないので、早歩きですぐ後ろまで追い付き、俺達は言われるまま彼女の向かう場所へとついていった。   「地下へ参りますので」   関係者以外立入禁止と貼られた扉を鍵で開け、さらに下へと階段を下っていく。   地下には俺も初めて入る。噂では帝国の重要な書類や本が詰まっているとは聞くが……。   うす明るい階段も終わり、再び司書は鍵を使って眼前の扉を開口する。   天井の電灯が光り、その空間があらわになった瞬間、思わず声を漏らした。   「これは……凄いな」   「……うん。私も驚いた」   見上げるくらいの高さまで膨大な量の本が本棚に並んでいる。それは視線を前に向ければ、ざらに百メートル以上は余裕である長さだ。   「捜すのも一苦労でしょうから予め私が見つけておきました。あちらに置いておりますので」   手の平で示された先には小さめの本棚があり、そこには数冊の本が既に用意されていた。 準備のいいことで。   「鍵は渡しておくので、出る時は一階の司書室に返却して下さい。それでは」   「あ、待ってくれ」   「なんでしょう?」   蓮に呼び止められ、司書は無表情にこちらを覗く。抑揚のない声色にしろ、どうも機械的な印象を与える女性だな。   「どうして今更になってこんな物を?」   「……私は言われた通りにしただけなので何も存じません。それはご自分で確かめて下さい」   それを最後に彼女はこの部屋から出ていってしまった。   言われた通り……?
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加