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それは一番消してしまいたい記憶だった。
「俺のしるしだ」と隼人は言った。
オレは泣き叫びながら苦痛を受け入れたのを覚えている。
あまりにも理不尽で凄惨な行為の数々に、いっそ記憶を失くしてしまいたかった。
けれどその痕は今も残っていてオレを苦しめ続けている。
そしてその行為の最中に隼人は何度も繰り返した。
お前は俺のモノだ、忘れるなと。
朦朧とした意識の中で、だがオレは決して頷くことはしなかった。
それが何であったとしても
お前の気持ちなんか、知りたくもない。
「………ぅ…」
下腹部の鈍い痛みで目が覚めた。
次に嗅覚が強く刺激される。これは自分がもっとも嫌いなにおいだ。
煙草のにおい。
「…っげほ」
「やっと目ぇ覚ました」
薄暗い空間の中で、ゆっくりと振り向きながら隼人が言った。
オレはそれに驚き、離れようとしたが身体が重くて上手く動かせない。くそ、思い切り腹に入れやがって…
身体が動かせない分、頭だけ動かし辺りを見渡そうとしたが、次の瞬間オレはぎくりと固まった。
見渡さなくても分かる…ここは、隼人の部屋だ。
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