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自分を苛めていた男が、自分の好きだった女と付き合っていた。
歪曲心
「あれ?本宮君じゃない?」
そう話し掛けられた瞬間、嬉しい感情なんて少しも湧き上がってくる筈もなく、オレは顔を隠すように下に俯いた。
「久しぶりだねー、モトくん違うとこ行っちゃったから…何か感じ変わった?」
「……別に」
変わって当然だ。
もう、あの頃とは違う…一年は長い。
変わってないのはお前だよ、木下。
委員長だった時と変わらずそのままお節介なんだな。
あの頃はそれが嬉しかったけど、今となってはうっとうしく感じる。
何で話し掛けてきたりしたんだ。
放っておいて欲しかったのに
黙ったままでいると、重い空気が流れ始めたのに気付いた木下が、不自然なほどに声を上げた。
「なーんか可愛げなくなっちゃって。なんてね、隼人もなんか言ってよ」
やめてくれ
威圧を感じて、その視線に背筋が凍り付く。
木下の隣りの男がまともに見れない。
そう。木下の隣りの『彼氏』と思われる人物、
神埼隼人
お前にだけは二度と会いたくなかったのに。
『おいモト、ジュース買って来いよ』
『モト、千円借してくんない』
始めはパシリからだった。
しかしそれでも新しいクラスになりたての頃は、俺と隼人は友人だったのだ。
人見知りが激しく、知り合いが誰もいなかった教室で、俯きがちだったオレに隼人は気さくに話しかけてくれた。
しかしそれはすぐに狂気へと変貌した。
きっかけは…何だっただろうか、ちょうど環境に順応し始め、自分が他の奴等とも仲良くなれた頃だったように思う。
ある日突然、隼人がオレのことをぞんざいに扱うようになった。
始めは、パシリから。
戸惑うオレに対して時折暴力も振う隼人はまるで別人で。
だけど変わったのはオレに対してだけで。
口で逆らえば暴力を振られ、
目で反抗すれば蔑まれる。
逃げることさえも、叶わなかった。
隼人は人気者で、常にクラスの中心的存在で皆に慕われていた。
だから誰もオレの訴えになんて耳を貸さない。
それどころか周りの悪友共は面白がり、隼人と一緒になってオレを苛め始めた。
せっかく出来た友人達も皆、自らの保身のために離れてゆき、オレはまた独りになって…
それでもただ、耐えるしかなかった。
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