一章

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『お前等たまってんじゃねぇの?』 と、関係があるのかないのか突拍子もないことを言う隼人。 何がだよ、そう視線を向けられるのに対し“面白いことならある”とオレを見ながら口端を上げた。 オレはその下から舐めるような目線にゾワっと鳥肌が立つのが分かった。何か言い知れぬ恐怖が足下からジワジワやってくる。 無意識に唾液を嘔下した。 一体何を言われるのか…何を……、 『脱げよ、モト』 『………!』 一言だった。 だがその絶対的な一言に、オレはその場に凍り付いたように固まった。 しかし隼人の一言に、固まったのはオレだけじゃなかった。 その場に居た悪友達が皆、一斉に怪訝な視線を隼人に向ける。 『は?何言ってんのお前』 近くに居た一人が顔を歪め、嫌悪した表情で隼人に言った。 そうだ…何を言っているんだ、と…言われた本人が一番にそう問いたかった。冗談も大概にしろと、そう言いたい。 だが、言葉なんて出ない。出せる状況じゃない。隼人の視線がまるで針のようにオレを刺して、指一本すら動かせなかった。 ──本気だ。 分かった瞬間、全身の血の気がザアと引いていく。 しかしそんな風に固まるオレを見ても、隼人の目付きは変わらない。 誰かがふざけた口調で言った。 『何、ここでストリップでもやらせんの?』 それはそれで面白そうだけど、と言う奴に対し、隼人は違うと首を振る。 『知らねぇの?男とヤると気持ちいいって』 まるで有り得ない言葉を吐く隼人に、皆、今度こそ非難の声を上げた。 『気持ち悪ぃこと言ってんじゃねぇよ隼人、たまってんなら女とヤれ』 『まじでな。つーかお前そっちの趣味あったんか』 『俺ぜってー勘弁。しかも相手モトだぜ!金貰っても嫌だわ』 人格を疑うような奴等の物言い。 だが当の隼人はそんなこと構ったことではないように笑ってみせた。 『じゃあお前等はそこで見てろよ』 『──…!』 隼人がそう言い立ち上がった瞬間、ビクリと身体が大きく揺れる。 嫌だ──来るな、来ないでくれ…ッ けれど唇が震えるだけで声にはならない。もはや言葉も出せない程の恐怖が自分を支配していた。
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