一章

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『─っ』 そんな中かろうじて少しだけだが、ジリ…と足が後ろに下がる。 それをバネにして出来るだけ速く逃げようと一気に脚を動かした。だが、逃げることなど叶うはずがない。 途端後ろから髪の毛をわし掴みにされ、両手を背中へ回され拘束されて、そのまま床へと押さえ付けられる。 『いッ─づ』 『おいおい隼人、マジかよ…いくらなんでもそれはヤベェんじゃねーの』 仲間達も隼人が本気だってことを悟ったのか、いよいよ本気まじりに制止を促す。 だがそんなことで止まる筈がない。隼人が抵抗する俺を押さえ付けながら言った。 『何で?お前らコイツの泣くとこ見たくねぇの?』 言いながら俺の服を脱がしに掛かる。 隼人の手が首筋から入って、制服のボタンを引きちぎった。俺は全力で抵抗するがそれも虚しく、押さえ付けられたまま何一つ抗うことが出来ない。 『やめ…ッやめろ!』 やっと出た言葉さえ何の役にも立たなかった。 逆に煽るように隼人の手を進ませる。下半身まで伸びた手に自身を触られて、嫌悪からゾワっと鳥肌がたった。 どうしてこんな…止めてくれ──嫌だ、嫌だっ! 『…ッや、だ』 何をされるか分からない恐怖と悔しさで、嗚咽が漏れる。青ざめていた顔も羞恥で熱が集まり赤くなっていった。 項に唇を落とされ、身体が跳ね上がる。悪ふざけにしたって度が過ぎてる─…こんなこと、男同士ですることじゃない。 気付くとあんなにうるさかった連中も何も言わなくなっていた。 誰も隼人の行為を咎めようとも、止めようともしない。 それは諦めなのか興味本位なのか… ただ皆、オレ達を見ていた。 視線に耐えられなくなって俯くと涙がパタパタと床に落ちていく。 歯を食いしばるけれど我慢出来なかった。 オレには泣くことしか出来なかったからだ。 ほぼ着ていたものを脱がされた状態で今度は仰向けにされ、脚を抱えられる。 オレが暴れると仲間の中の一人が近付いてきて言った。 『…俺も入れろよ、コイツ押さえといてやるから。いいだろ?隼人』 ─…どうして、 こんな目に。 そうどんなに問いても、助けを求めても…オレは分かっていたけれど。 ──誰も助けてなんてくれない。
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