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「─…モトくん?」
「っ…!」
呼び掛けられた瞬間、ハッとして我にかえる。
(……あ…)
「どうしたの…?凄い汗だよ」
そう木下に見上げられて、初めて自分が酷く汗を掻き、震えていることに気付く。
恐る恐る顔を上げると…そこには悪夢のような日々の元凶が、オレを射抜くように見ていた。
「久しぶり」
「─ッ!」
わざとらしく口角を上げながら、隼人は皮肉めいた一言を発した。その一言でオレの身体は異常なくらいに跳ね上がる。
全身が心臓になったみたいだった。
隼人の目が、まるっきり笑っていない。一瞬であの頃に戻ったかのような感覚に陥る。
何故今さら─…今でも夢に見る、苦しくて押し潰されていた日々をまた繰り返すのか。
冗談じゃない。冗談じゃなかった。
オレの人生はオレのものだ。誰にも壊す権利なんてない筈だ。
こんな奴に脅かされて生きていくなんて冗談じゃない。
早く、ここから逃げなければ。今出来ることはそれしかない。
思考が震えている脚を叱咤する。逃げてしまえばもう二度と会わずにいられる…早く、早く!
「─…っ」
「モトくん…?」
木下から声を掛けられると同時に後ろへと後退り、そのまま振り返って走り出そうとした──だが、瞬間伸びてきた手に腕を強く掴まれる。
あの時のことがまたしても頭の中でフラッシュバックした。
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