一章

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「木下…!」 走っていく後ろ姿に声を掛けたが、振り返られることはなかった。 思わぬ展開にオレの頭は混乱し、同時に怒りがフツフツと沸いてくる。 「…お前…あんな言い方…」 「は?何。…あぁ、お前アイツのこと好きなんだっけ。どこがいいわけ?あんな女」 「!…何、言っ…」 驚愕のあまり言葉が出ない。 隼人が何を言ったのか上手く飲み込めなかった。 信じられない…木下を好きなのはお前の方なんだろう?付き合ってるんじゃないのか。 『あんな女』? …一体どういうことだよこれは…どうして! 「何言ってんだよ…!あいつと…木下と付き合ってんのはお前だろうが!」 今にも胸倉を掴みそうな勢いで叫んだ。 恐怖よりも、混乱と怒りの方が勝っている…お前がそれを言うのかと。オレの気持ちを知りながら、木下と付き合っているお前が! 「付き合ってる?お前こそ何言ってんの?」 しかしそんなオレの問いさえも馬鹿にしたように軽く流す隼人。 カッとなったオレは本気で掴み掛かろうとしたが、直前で腕を捕らえられた。左と共に両手を拘束される。 悔しさに外そうともがくがビクともしない。 「ッざけてんじゃねぇ…離せ!」 「ふざけてねぇよ。何か勘違いしてねぇかお前、俺が木下と付き合ってるだって?馬鹿かテメェは」 「…な…っ」 「誰があんな女と付き合うかよ。」 吐き捨てるように断言した隼人。その嫌悪した表情にオレはますます混乱していく。
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