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「木下…!」
走っていく後ろ姿に声を掛けたが、振り返られることはなかった。
思わぬ展開にオレの頭は混乱し、同時に怒りがフツフツと沸いてくる。
「…お前…あんな言い方…」
「は?何。…あぁ、お前アイツのこと好きなんだっけ。どこがいいわけ?あんな女」
「!…何、言っ…」
驚愕のあまり言葉が出ない。
隼人が何を言ったのか上手く飲み込めなかった。
信じられない…木下を好きなのはお前の方なんだろう?付き合ってるんじゃないのか。
『あんな女』?
…一体どういうことだよこれは…どうして!
「何言ってんだよ…!あいつと…木下と付き合ってんのはお前だろうが!」
今にも胸倉を掴みそうな勢いで叫んだ。
恐怖よりも、混乱と怒りの方が勝っている…お前がそれを言うのかと。オレの気持ちを知りながら、木下と付き合っているお前が!
「付き合ってる?お前こそ何言ってんの?」
しかしそんなオレの問いさえも馬鹿にしたように軽く流す隼人。
カッとなったオレは本気で掴み掛かろうとしたが、直前で腕を捕らえられた。左と共に両手を拘束される。
悔しさに外そうともがくがビクともしない。
「ッざけてんじゃねぇ…離せ!」
「ふざけてねぇよ。何か勘違いしてねぇかお前、俺が木下と付き合ってるだって?馬鹿かテメェは」
「…な…っ」
「誰があんな女と付き合うかよ。」
吐き捨てるように断言した隼人。その嫌悪した表情にオレはますます混乱していく。
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