第12章 秋祭り、までの日々(後)【最終章】

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「……いい雰囲気のところ、申し訳ないけど。」  その沈黙を破ってきた声に、二人はほぼ同時に我に戻った。 「ね、姉ちゃん!? なな何の用!?」  どもりながらその声の主に抗議をする優。奏太は我に戻って完全にフリーズした模様。 「なんの用って…あなた達、夕ごはんは?いらないの?」  呆れたようにモノを言う絢音に、優と奏太はほぼ同時に「あっ」と声を上げた。 *    夕食を済ませて、優が奏太に「ちょっと散歩しない?」と誘って、近所の公園へと向かう。9月も半ばになって、薄手の長袖を着ていても肌寒く感じる風が流れている。 「……湯冷めしない内に、言わないとね」  公園に到着して、優にとって思い入れのあるベンチの近くで、奏太に向かって声を掛ける。 (――私が告白した場所。……この場所で、もう一度――) 「……散歩だけじゃなかったのか?」 「うん……ちょっと、ね。」 「ふうん」 (奏太は覚えているのかな。それとも、忘れたフリ、してるのかな?)  一瞬、強めの風が公園の中を通り過ぎて優の髪が風になびく。 「――私と奏太が、従兄妹だって知らされて、本当に驚いたんだ。……こんなに。ね?」  髪を抑えながら言葉を紡いでいく。 「ほんの数日前の出来事なのに、ずっと、ずっと前から悩んできたような。そんな風に錯覚することもあったんだよ。」  思いを言葉にしていく度に、数日間の葛藤が脳裏をかすめていく。 「それでね、もし……従兄だって言われた人が、奏太じゃなかったらどう思ったのかなって、考えたことがあってね」 「……それで、どう思った?」  静かに勇の言葉を聞いてきた奏太が効いて来る。それに優は小さく首を振り 「全然。『あ、そうなんだ』っていう程度の反応で終わっちゃいそう。」  ここで、優は奏太に一歩近寄った。 「――やっぱり、その相手が奏太だったから――奏太のことが、好きだから――……こんなに悩んだのかもしれない。」 「……は?」  もう一歩、奏太に近づく。 「だからね。もう一度―――…。」  改めて、奏太に私の思いを伝えたい。 「奏太のことが好きです。付き合って下さい!」
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