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金曜日の朝
いつもと同じ朝食をとろうと下におりていく。
俺の部屋は2階にある。2つ部屋があるが、1つは兄の部屋だ。今は一人ぐらしで家にいない。両親の部屋は1階にあるので、最近は静かな夜を過ごせる。
下におりると、ひと気を感じた。
父さんは出張でいない、母さんか…?
「母さん、今日仕事は……」
…開いた口が塞がらなかった。
「コウくん、おはよ。」
昨日再会した幼なじみがエプロン姿でそこにいた。その姿は若奥様そのままだった。驚きのあまりさっきまでの眠気が吹き飛んだ。
(…見惚れている場合じゃない!なんで遥ちゃんが!?…家を知っているのは、おそらく昔の記憶が辿って来たのだろうか?俺の家に遥はよく来ていた。しかし、何故、エプロン姿!これは夢か!何かのご褒美か………落ち着け俺!)
混乱していたが、なんとか話を切り出した。
「な、なんで、遥ちゃんが?」
「朝早く起きちゃって…それでおばさんへの挨拶とコウくん迎えに来たら、まだ起きてなかったから待ってたんだぁ。」
「それで、その格好は…?」
「おばさんに借りたんだ。朝食作っておいたんだけど…迷惑だった…?」
「そんなことはないが…ちょっとびっくりしたっていうかなんというか…」
「?」
遥は首をかしげる。
「いや、なっなんでもないよ、ハハハ…!」
笑って誤魔化すぐらいしかできないのが情けない。
「変なコウくん。じゃあ早くご飯食べて、冷めちゃうよ。」
「おぉ、凄いな!」
「冷蔵庫にあったものでね、あっ、おばさんからの許可はちゃんと取ったよ。」
「そっか、んじゃ、いただきます」
「召し上がれ。」
そう言って俺が座る正面にテーブルを挟んで腰を下ろした。メニューはトーストと目玉焼き、ウィンナーとサラダ。これだけでも充分なぐらいだ。
「やっぱり、いいもんだな、朝、朝食があるって」
「日頃からちゃんと朝食とらないとダメですよ~。」
とイタズラぽく笑って言った。
ちょっとその可愛さにやられそうになった俺は、お決まりのことを言った。
「遥ちゃんは、いいお嫁さんになるな。」
冗談ぽく言ったつもりだったが…
「そ、そうかな…」
と顔を真っ赤にして照れてしまった。
(これは予想外だ)
気まずいと感じた俺だが、こういう空気の時どう対処すればいいのかわからない。
「ははは…」
また笑ってこの空気を誤魔化すしかできない俺は、とりあえず朝食を胃に流し込むことにした。
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