桜井遥編 

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「ご馳走さまでした。」 「お粗末さまでした、じゃ、片付けるね」 「あ、手伝う。」 「うん、ありがと。」 さすがに、朝食作ってもらって何もしないのは気が引ける。それでも、ほとんどやってもらってしまった。俺と言えば皿の水気をとるぐらいしかやれなかった。 「でも、びっくりしたな~、コウくん身長伸びたね!」 「そりゃ10年経てばな」 昔は、クラスでも小さな方だった。 「遥ちゃんこそ、いつこっちに来てたんだよ、あんなに驚いたのは久しぶりだったぜ…。」 (それに大人ぽくもなった。) 女性らしい体つきになっていて、俺は目のやり場に困っていた。 「4月にはここに来てたんだ、でも同じ学校なのは凄い偶然だね~…ってコウくん、時間、時間、遅刻しちゃうよ。」 「おっと、いけね。」 身支度を整え家出た。 二人での登校はいままでにない感覚だ。 「コウくん、ブレザーの襟立ってる。」 「え?」 緑山高校は男女ともにブレザーだ。急いで出たため襟が立っていることに気付かなかった。 「しょうがないなぁ、直してあげる。」 彼女はブレザー襟を直してくれた。今までにない距離に俺はドキドキしている。ほんのり桜の匂いが彼女から漂う。これはいかんと感じ、息を止めた。男が勝手に女性の匂いを嗅ぐのは、罪悪感を覚えてしまったからだ。 「これでよしっと。」 「ありがと。」 「どういたしまして。」 遥が笑顔でこたえた。 (やはり、この笑顔には勝てそうにない。) そんなことを感じていると、いつもと同じ衝撃が背中に走った。
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