桜井遥編 

16/47
前へ
/53ページ
次へ
緑山高校の部活は盛んである。文化部、運動部両方一通りあると思っていい。なので、全部まわるとなるとちょっと骨が折れる。 ということで、3人で相談し来週もまわることになった。 とりあえず、今日は運動部中心でまわる。 最初は野球部だ。 「着いたな。」 「そうだね。」 「みたいだな。」 俺、遥、尾田の順での反応を見てわかってしまうだろうが、入部する気はほぼ皆無。しかし、見もしないで判断するのは、「俺の主義に反する」ということで見学はする。 すると、練習している生徒で何故か1人、養成ギプスをつけている人がいる。 「コウくん、あれって…何かのパフォーマンスかな?」 「…そうなんじゃないかな。さすがに、素でアレをするのは恥ずかしくないか?」 「そ、そうだよね~。」 「いや、アレは素でやってるよ。」 「「ウソ!」」 俺と遥は尾田の言葉に耳を疑った。 「ホント、野球部の奴が言ってた、先輩に変人がいるって。」 「尾田も変人」ということはツッコまないでおこう。 すると、新入生の俺達に気づいたそのギプスをつけた先輩がこっちに近づいてきた。 「やぁ!新入生!俺は2年の野口信也だ。」 「「ど、どうも…。」」 「あぁこれかい、昔っからやっていることだから気にしないでくれ。」 (無理だろ!) (無理だよ!) 俺と遥はぐっとこらえた。ムッキムキなうえさっきまで練習していたせいで汗ばんでいる、それにこの威圧感で気にしないのは…。 「わかりました。」 (おい、尾田!お前は一体何なんだ!?) 心の中でツッコんだ。 「部活見学かい?色々見てみるといい。ここの部活動は盛んだからな、ハッハッハッ。」 「はい、わかりました。」 「では、俺は戻るよ、また会おう!」 そう言って、練習に戻る野口先輩。 俺と遥が途中から何もしゃべれなくなってしまったのは言うまでもない。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加