桜井遥編 

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入学式の次の日の朝。 「夢…か…。」 久しぶりに見た。寂しくて忘れようとしてきた昔の思い出。 夢で見てしまうと、どこまでが本当の出来事だったかわからなくなってしまう。 この夢を見たあとは寂しい気持ちが残っている。あまりいい気分じゃない。 登校の準備をし朝食をとる。朝食は簡単にトーストと牛乳。朝はそれぐらいですませる。 今日は時間には余裕がある、毎日遅刻寸前の登校は身が持たない。 俺は戸締まりをして家を出る。 今日は自転車は使わない、春の暖かさをゆっくり味わいたい気分だからだ。 ………寝起きが良くなかったのもあるが………。 この時間は登校する人はまばらだ。急ぐ理由もないので、ゆっくり歩いて行く。 ふと、考え始める。 昨日見た女子生徒のことだ。見た感じだと同じ新入生のようだった。桜色のショートヘアの彼女と俺は目が会った。それに気付いた彼女は、俺に笑顔で何か言ったようだった。 しかし、俺は情けないことにその場を足早に立ち去った。女子生徒を見て、目があったら逃げるだろう。居心地が悪いのもあったが、あの笑顔の破壊力は耐性をつけなければ直視できないはずだ。 (可愛かったなぁ…。) そんなことを考えていると、いきなり背中を叩かれた。
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