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外に出るために扉を開けると、物凄い勢いで寒風が俺の体に当たってきた。
季節は冬。
アスミアルと呼ばれるこの島はロシアの上にあるらしく、冬になるとかなり寒くなる。
『らしく』と言うのは、この島はここ100年以内に起きた最もデカい戦争、『天翼戦争』とかいう全世界を巻き込んだ戦争によって生まれたために、家にある古い地図には載っていないのだ。
「寒ッ!!」
とは言っても、何故か本土よりは寒くないらしい。
しかし、寒いものは寒い。身長184センチで筋肉質と表面積が多い分、さらに寒く感じる。
と、そんな時―――
「あ、おはようございますコールさん」
―――透き通るような男の声が、正面から聞こえてきた。
そういえば、俺の1日が始まりには「これがなくちゃな」という物がある。
それがコレ。こいつの挨拶がなくちゃ、1日が始まった感じがしない。
「お、今日は早えぇな、トーイ…」
この俺よりも少し小さい…あー178くらいの男はトーイ・ドフロリューボフ。
俺の昔からのダチで、剣の道では俺の後輩。魔法と医療に関しては俺の先輩。綺麗な灰色の髪とナヨナヨした感じの雰囲気が特徴だ。
「今日は、っていつもこの時間にこの場所で会ってますよね?」
「ハハ、そうだっけか?」
この冗談も毎日やっているような気もするが、逆にそれが良い。
「まーだ寝ぼけてるんですか? ほら、顔でも洗いにいきましょう」
「えー、丁度良いから持ってきてくんね?」
「僕に任せたら別の物を持ってくるかもしれませんよ? だから一緒に行きましょう」
「…う~い」
別の物ってなんだよ、逆に見てみたいわ、などとどうでも良いような、それでいてどうでも良くないような、いつもの感傷に浸りながら、俺は苦笑いするトーイにつれられ村の井戸へ向かった。
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