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「よいしょ…と」
村の中央にある井戸の中に着くとと、トーイはさっさとその中に釣瓶(つるべ)を落とした。
すると景気よく水の爆ぜる音が―――しなかった。
代わりに聞こえたのは、軽い空洞がある物が…そう釣瓶
のような物が、硬い地面に落ちた音。
…なんだ今の音?
「…何でしょうね?今の音」
「さあな。とりあえず井戸の中からだったぞ?」
「…と、とりあえず釣瓶を上げましょうか」
スルスルとトーイが釣瓶の紐を引っ張る。
すると井戸の中を見ていたトーイが驚いた顔をした。
「どうした?」
「コ、コールさん、紐の先に釣瓶が―――
―――ありました」
スバァン!という景気の良い音が鳴るくらいの強さで、俺はトーイの頭をぶっ叩いた。
「なんだ、今の間は!」
「い、いやちょっとホラー的なものをだそうかと…」
「誰も望んでねぇよ!しかも釣瓶じゃ怖さも何ねぇっ!」
「あははは…それよりコールさん、これ」
トーイが手に何かをもって前に出してきた。
「…?」
それは…壊れた釣瓶だった。
「これってどういうことだと思います?」
「………」
少し考える。
「…井戸の中が凍って、それにぶち当たったんじゃないか?」
「じゃあ、コールさん。これは?」
壊れた釣瓶の端を目前に出される。
「…………泥?」
よく見ると端に黒っぽい泥がついていた。
「…やっぱり、そうですよね」
しかも泥にしては乾いている。いや、凍っているのか。
今の衝撃音の事を考えるとこれは…。
「まさか…井戸が枯れた?」
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