別離

5/7
前へ
/55ページ
次へ
だけれど、そんな中。 一人大切な存在がいた。 「また、こんなところにいたの?」 「セレス」 セレス。 幼なじみの女の子。 彼女はクロスを怖がらず、常に話しかけてくれた。 桜色の髪が綺麗で、銀の瞳は不思議とあたたかかった。 大好きな、存在。 だがクロスはそれにさえ恐怖する。 傷付けてしまうかもしれない。 失ってしまうかも、しれない。 少しだけ、距離を置き、一番楽な位置で接した。 セレスは常にクロスを庇い続けていたことを、そのせいで彼は知らなかった。 力に怯えて、クロスは生き続けた。 そんな苦しい日々に、ひとつの光が差し込む。 ある日買い出しに出掛けた都市の中で見た、一枚のチラシ。 『騎士募集』 騎士ならば。 力が必要だ。 この強大な力でも 必要とされ、堂々と生きられる。 迷わなかった。 騎士となることを、その日決意した。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加