24人が本棚に入れています
本棚に追加
両親は反対せず、ただクロスが望むなら、とそう答えた。
正直、強すぎるクロスをどう扱えばいいのか、両親も苦しんでいた。
集落は人と人の繋がりが濃い。
そんな中度々他人を傷付けてしまうクロスは、集落の人間からも毛嫌いされていた。
大人さえ軽々傷付けられるクロスは、畏怖の対象でしかない。
「セレス、私は騎士になるよ」
そう告げたのは、騎士となる為都市に出る前日。
少し痩せこけた彼女は、驚いた表情でクロスを見やる。
「……嘘」
「嘘じゃ、ない」
水色の髪を揺らし、クロスは首を横に振った。
「危ないわ、騎士なんて。それに……」
「もう、決めたんだ」
分かってもらおうとは思わない。
理解はされない。
クロスは、セレスを突き放した。
もう、離れてしまうのならば。
「目障りだ。もう、私に関わらないでくれ」
絶望に歪んだセレスの顔を
クロスは見なかった。
「私は認めないっ」
泣きながら、セレスは走り去った。
これでいい、と。
クロスはそのまま、セレスとは喧嘩したまま故郷を後にしたのである。
最初のコメントを投稿しよう!