別離

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「お前がクロスか?」 ある種の思考の渦から掬い上げられ、クロスは顔をあげた。 鎧を纏った、騎士が目の前にいた。 紺の長めの髪に、深緑の瞳。 ああ、先輩にあたる人物か。 クロスは認識する。 「国王様は?」 「先程帰られました」 クロスは恭しくそう答え、頭を下げる。 「名はクロス。今日から騎士となります。よろしくお願いします、先輩」 「やめろって。気軽に接してくれよ。俺の名前はジェイド。呼び捨てにしてくれ」 「しかし」 戸惑うクロスに、ジェイドは苦笑いする。 「先輩命令。な? 敬語も禁止」 「はあ……」 「さ、部屋に行くぞ?」 ジェイドの言葉に頷き、クロスは足を踏み出した。 ここから始まる、先の運命を。 彼はまだ知らない。
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