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「クロス」
名前を呼ばれ、彼は振り向いた。
クロスと呼ばれた騎士は、優しく微笑んで、名を呼んだ女性に手を伸ばす。
「シディア様、何でしょう?」
その手を掴んで、山吹色の髪の少女は嬉しそうに言った。
エメラルドグリーンの瞳が笑う。
「クロスを見掛けたから、声をかけたのですわ」
無邪気に笑う彼女を、クロスはただひたすらに愛しく思う。
「さあ、今日も貴女の為に、戦ってきます」
全てはシディアの為に、この命があるのだ、と。
騎士クロスは誓った。
それを、シディアは受け入れた。
「……行ってらっしゃいまし」
寂しそうに笑いながら、手を離す。
クロスはその手でシディアの頭を撫で、約束する。
幾度となく。
幾度でも、何度でも。
「生きて帰ります。そして、貴女を護ります」
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