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鋭い切っ先が向けられ、また自分もそれを向け。
自我を取り戻したのは、相手を殺める寸前だった。
「クロスっ……」
息を飲んだ声。
震えたブルーの瞳。
血に濡れた体と剣。
転がる無数の死体の中で
クロスと彼はたった二人、生き残った。
「アンバー……」
名を呼んだら、彼、アンバーは崩れ落ちた。
今何をした
今何をしようとした
今自分は何を。
「……後輩にまで、その剣を向けるとは、随分尻が軽くなったな?」
アンバーの軽口に、クロスは目眩を覚え。
「……やめよう、無駄だアンバー」
「……ああ」
かつてそこにあった街の姿はなく。
火に囲まれた残骸の中、二人途方に暮れて。
「行けよ」
アンバーは吐き捨てた。
「お前は、腐っちゃいけねぇ」
忘れられない
あの惨劇を、悔しさを悲しみを恐怖を後悔を。
三年前の悲劇と転機。
そして、全ては十年前に、始まった――――。
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