別離

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生まれ故郷は、小さな集落。 クロスはそこで、平凡な両親の元に生まれた。 だが。 クロスは天才であり異質であった。 「うわあぁぁぁっ!!」 クロスが5歳の頃。 彼は目の前で地面に這いつくばり逃げようとする、同年代の子供を怯えて見ていた。 クロスの手は赤く血に汚れ、目の前の子供は顔を血に染め怯えた表情でもがいている。 きっかけは、小さなこと。 ちょっとした悪口を、耳にした。 元から運動神経はよく、集落の学校では、スポーツでクロスに敵うものはいなかった。 慢心していた、己の力を。 安易に力を奮った。 そして傷付けた。 結果、クロスは怯える。 ここまで傷付けるつもりはなかったのだ。 怖かった。 怯える瞳が怖かった。 それ以来、クロスは距離を置かれたし、クロスも距離を置いた。 けれど、何かある度に他人を傷付け、自身の力の強さに彼は怯えた。 傷付けたくない。 それは、叶わない夢のように。 クロスを蝕んだ。
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