∮Puppy Love

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   「ちょっと、先に行かないでよ」  私はやっとのことで修二の元に辿り着くと、ハァハァと息を荒げた。  「彩乃が遅せぇから悪りぃんだろ」  修二はそう言うと、げた箱から靴を取り出した。相変わらず修二は機嫌が悪い。  「そんなこと言われたって……」  私はブスッとした顔で修二を見つめると、げた箱からそっと靴を取り出した。  オレンジ色に染まる昇降口。  隣接する中学から聞こえる、ポーンポーンという、テニスラケットがボールを打つ音。カキーンという金属バットの音。管弦楽器のメロディー。  私と修二は微妙な距離を保ちながら、学校をあとにした。  
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