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「よいしょっと……」
深鈴を抱え直して出たエレベーター前は、大きな通りになっており、噴水があったりタクシー乗り場があったりして、地上の駅前の様子と変わらない。
大学はすぐ近くなので、そちらに向かって歩いて行くと、すぐに見覚えのある後ろ姿を見つけた。
すらりとした体つきの男と、黒髪白衣の女だ。
「頼! 野乃夏!」
わりと大声で呼び掛けると、2人の男女が振り向いた。
「あ、みっちゃん。おはよう」
男の方は、ともすれば女に見えなくもない、中性的な顔立ちの草食系男子。
七三の髪の毛は柔らかく垂れていて、目元も優しい雰囲気だ。
「光遥か。遅かったな」
女の方は、猫眼でスマートな顔立ちをした、白衣のクールビューティ。
――……のはずなのだが、目の下にくっきりと隈が出来ていて、無造作に伸ばされた緩いウェーブの黒髪は、手入れが行き届いておらず、絡まり放題広がり放題だった。
男、志紀沢頼 (しきざわ・より)。
女、鏡音野乃夏 (かがみね・ののか)。
うちの研究室――……否、第二階層全体で見ても、非常に優秀な2人だ。
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