40人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね、さっきは起こしちゃったかな?」
頼の気の抜けた笑みに、オレは毒を吐いた。
「朝食の場は聖域だぞ、草食系」
「うっ、ごめん……」
「冗談だ。気にするな」
2人に追い付き、一緒に歩きだす。
すると、オレに抱えられた深鈴を見て、野乃夏が白衣の袖をまくった手で深鈴の鼻をくすぐった。
「サヴァン様はお疲れか?」
「あぁ。どっかのマッドサイエンティストに電卓代わりにされたからな」
「電卓代わりになどしてない。好意的に、協力してもらったさ?」
「オレは別に、お前のこととは言ってないんだが」
「おっと、はやとちりだったか」
ハッ、と野乃夏は鼻で笑い、ボサボサの長髪をがしがしと掻きむしった。
その様子を見て、頼が苦笑しながら口を開く。
「のんちゃん、たまには髪の毛梳かさなきゃダメだよ」
「そうか? じゃあ頼、研究室に着いたら頼むぞ。名前に忠実に生きたまえ」
「自分でやろうよ。女の子でしょ?」
「生憎、私は科学に魂を売り渡しているのでね」
ひらひらと手を振り、野乃夏は頼の追及から逃れた。
ちなみに、この2人もオレと深鈴のようにカップルだ。
どちらがどんな告白をしたかなど想像さえできないが、とにかく2人は付き合っている。
どんな経緯があったのか、個人的には激しく気になっているのだが。
オレたちはいつの間にか大学の構内へと入っており、体は自然に研究室へ向かっている。
最初のコメントを投稿しよう!