第1章

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「ごめんね、さっきは起こしちゃったかな?」 頼の気の抜けた笑みに、オレは毒を吐いた。 「朝食の場は聖域だぞ、草食系」 「うっ、ごめん……」 「冗談だ。気にするな」 2人に追い付き、一緒に歩きだす。 すると、オレに抱えられた深鈴を見て、野乃夏が白衣の袖をまくった手で深鈴の鼻をくすぐった。 「サヴァン様はお疲れか?」 「あぁ。どっかのマッドサイエンティストに電卓代わりにされたからな」 「電卓代わりになどしてない。好意的に、協力してもらったさ?」 「オレは別に、お前のこととは言ってないんだが」 「おっと、はやとちりだったか」 ハッ、と野乃夏は鼻で笑い、ボサボサの長髪をがしがしと掻きむしった。 その様子を見て、頼が苦笑しながら口を開く。 「のんちゃん、たまには髪の毛梳かさなきゃダメだよ」 「そうか? じゃあ頼、研究室に着いたら頼むぞ。名前に忠実に生きたまえ」 「自分でやろうよ。女の子でしょ?」 「生憎、私は科学に魂を売り渡しているのでね」 ひらひらと手を振り、野乃夏は頼の追及から逃れた。 ちなみに、この2人もオレと深鈴のようにカップルだ。 どちらがどんな告白をしたかなど想像さえできないが、とにかく2人は付き合っている。 どんな経緯があったのか、個人的には激しく気になっているのだが。 オレたちはいつの間にか大学の構内へと入っており、体は自然に研究室へ向かっている。
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